旅するペーパーくん

ペーパーくんの癒しとヒラメキの日々

参加型アート

マサは、秘書の妻に作ってもらった弁当をトートバッグに入れて青少年会館へ自転車で向かった。5分も走ると駐輪場に着き、自動ドアが開くと大きな柱時の針が4時半過ぎを指していた。これから5時間の勤務になるので、弁当箱は冷蔵庫に入れてからデスクに座った。6人の職員が交代でマサとペアになって仕事をする体制になっていた。この日は元女性教師の横さんとの組合せとなり「今日もよろしくお願いします。」とマサは元気に挨拶をした。浅野温子似の職員ハットさんから聞いたらしく「入り口を演出するアート作品を是非お願いします。」と元教師らしく丁寧な口調だった。入り口には定期的に大きなパネルに手作りメッセージが貼られ、現在はSDGsをテーマにした内容を伝えている。2ヶ月前にはパネルの前にウミガメを作ってほしいと依頼されていた。段ボールを使って8角形の立体にして、アタマと手足に膨らませたレジ袋を入れてウミガメを制作してあげた。「これは素晴らしい!」と背中に乗せた甲羅に見立てた6角形の段ボール板を見て「クレヨンを置いて、甲羅に好きな色を描いてもらうと面白くなる!」と子供たちに参加できるアイデアを膨らませてくれた。この10ヶ月の間に、マサの特性をかなり見抜いていたようだった。「ちょっと倉庫に行きましょう!」と連れて行かれると「ここの色画用紙は好きに使っていいですから」と今まで使ったことがない大きなサイズの色画用紙が色とりどり棚に積んであった。「これは有り難いです。いろいろ考えてみます。」とウキウキが止まらず笑顔で応えた。背中合わせの席に戻り振り向きながら、ちょっとしたアイデア会議になった。「入り口に飾る大きなアート作品は、ウミガメの甲羅のように子供達で作る参加型アートにしませんか?」と提案すると「それはいいかもしれません。それでいきましょう!」とすんなりと方向が決まった。「ペーパーリーフのプチッテを使うので少しばかり費用がかかりますが、、」と肝心なところは付け加えると「費用面は職員のハットさんにしかわからないので聞いてくださいね」と次に浅野温子似のハットさんに会える日が1週間後の手帳を見るマサだった。