旅するペーパーくん

ペーパーくんの癒しとヒラメキの日々

逆サプライズ

マサは、アート講座が無事に終わってホッとしていた。メディアコスモスのおどるスタジオでは初めての開催となった。その名の通り、踊ることを目的にしているので、片面が鏡張りで反対の片面がガラス張りで外を歩いている人からも丸見えの会場である。開放感があり電気をつけなくても明るく、気分良くテンションも上がる。ただ残念だったのは、カーテンを閉めても明るさが残って、プロジェクターで投影した説明資料や完成した作品画像がキレイに見えなかったことだった。今回の講座でサプライズを仕掛けることにしたが、逆にサプライズを受けることになった。当日の朝スマホに見慣れぬ番号が震えていた。『大人のアート講座に子供がやりたいと言っているので、いいですか?』と小学一年生の子を持つ母親からだった。もちろんOKの返事をして会場で待つことにした。お母さんと一緒にやってきた子は元気いっぱいの女の子だった。始まる前から興味津々で、マサの作った動物キャラクターを眺めたり触ったりして作り方を聞いてきた。講座が始まり説明を始めると『ラミネートって何?』とするどい質問をしてくる。確かに大人は理解して普通に使っている言葉でも、子供にとってはわからないことは結構あることに気が付かされた。『途中で抜けていいですか?』と母親が言うと、それぞれが作品を一気に作り上げたのには驚いた。『それじゃ写真を撮ってからラミネートするね』と別室の作るスタジオでラミネート機で作品をフィルムにサンドして熱を加えて固定した。部屋に戻って『はい、どうぞ!』と作品を手渡すと親子とも笑顔で嬉しそうだった。やはり先に帰り仕度を始めていたので、マサからのサプライズの『しおりだよ!』と渡すとキョトンとしていた。赤とピンクの葉っぱを使ってハート型に並べてラミネートに仕上げた『しおり』だった。次から次へと出来上がる作品を別室でラミネートとしていると、二人の親子が扉を開けて『きょうはありがとうございました』と律儀にも揃ってお辞儀をする姿も、マサにとっては逆サプライズとなった。