旅するペーパーくん

ペーパーくんの癒しとヒラメキの日々

笑いは取れたか?

マサは、新入社員を前にやはり緊張していた。僕の顔が浮かんだらしく『汗ってんじゃねーよ!』のささやく声を耳して、やや落ち着きを取り戻した。『キリッツ、レイ!』と代表の男子が挨拶して席に座った。とにかくまずはアイコンタクトをひとりひとりと交わすことにした。昼食を食べた後だけに、もうすでにまぶたが閉じそうな男子がいた。これはこのままやったらさすがにマズイと予定のメニューを変更することにした。『マニュアル』を解説することが、マサに課せられた課題だった。マニュアルは配ったものの、文字が多くてただでさえ眠くなることはわかっていた。オレンジとピンクのカードを配った。『このカードに自分のアピールポイントを書いて!』と8人全員に配ると目が点になるのがわかった。『15分マニュアル説明したら、このカードで1人ずつ自己紹介して!』『順番はこちらで指名するから』というと前列に座った女子3人は、ニッコリ笑ってマサを見つめ返した。講師陣のうわさによれば、この女子3人はよく瞼を閉じると聞いていたので不思議だった。昨年の新入社員のカードの事例を読み上げる。身長、趣味、出身地などカンタンなメモカードだった。15分たつと男子を指名した。事例に習って真面目に応えてくれる。マニュアル説明は30分で終わり、残り時間は質問タイムとした。計算通り15分間隔にならず、自己紹介のペースが上がっていった。質問もなくなり『自己紹介カード次の人は』と言うたびに笑う女子たちだった。ここで笑いが取れて今日の目標を達成した気分のマサだった。女子3人は、最後に回したのは正解だった。最後までマサを見つめて瞼を閉じなかった。『私の得意なことは、楽器のドラムとスリーレターコードを覚えること』とマサの?の目を見て『JALなど航空会社や飛行場名を3文字の英字のコードを翻訳すること』と旅のテーマに僕も興味を持った。『クイズ99人の壁に出るといいよ』とマサは、最後もマニュアルの話を出さずに『キリッツ、レイ!』と頭を下げて満足顔だった。