旅するペーパーくん

ペーパーくんの癒しとヒラメキの日々

新聞の効果

マサは、同窓会会場の下見の後にO女子に連れられて、同級生のマスターの店に入った。すでに7人がカウンターに座って銘々好きなドリンクを置いていた。同じクラスだったタカちゃんの横に座ると、たくさんのお菓子の箱を差し出して『娘の結婚式で配ったから食べてや』と少し関市のなまりを交えての挨拶代わりだった。彼とは中学時代に野球の県大会で戦った相手校だったらしく、キャッチャーだったマサの二塁への暴投でサヨナラ負けしたことを鮮明に覚えていて熱く語り出した。高校時代は怪我で野球はできなかったが、大学からずーと現在は還暦野球と称してバリバリの現役で、顔もコンガリと焼けているのがわかった。『あのすごい玉を投げたピッチャーどうしとる?』『県岐商には行ったが背が低いので外野手になった。甲子園は行けなかった』マサは、どんどん昔のことを思い出していた。ピッチャーのお陰で、市大会や地区大会など数多くの優勝の経験をしてきた。その試合結果とバッテリーの名前が岐阜新聞に掲載されるので、マサの母親が切り抜いて写真と一緒にアルバムに貼っていた。スポーツ欄の隅の方ではあったが、プロ野球の試合結果と同じ面だったので、少しだけ誇らしくもあった。いつかドラゴンズの選手になりたいと夢だけは大きかった。それ以降に新聞に名前が載ることがなかったが、今年の1月アート講座の取材を岐阜新聞の記者から受けることになった。始めたキッカケや今後の展開についてインタビューだった。1週間後の朝4時によほど驚いたのか、朝刊を見た友人から記事の画像が15人のグループLINEで送られてきた。高校の野球部のN監督からも『実物より男前に写っている』と電話があったことをメールで知らせてくれた。それから5ヶ月たったO会の遅い時間に入ってきたバレー部のムラちゃんに『久しぶり、新聞みたよ!』といつまでも続く『新聞の効果』に驚くマサがいた。