旅するペーパーくん

ペーパーくんの癒しとヒラメキの日々

旅するペーパーくん2

僕は8ヶ月ぶりに、マサから起こされた。ずいぶん長い間、眠っていたので世の中変わったのかなあ?マサは、なんだか朝から落ち着かない様子だ。市民活動支援事業のプレゼンがあるらしい。3年目の挑戦で、今年は応募者が多く2倍の競争率になっている。妻の秘書もパソコンを操作するので、昨日から何度も練習して、やっとプレゼン時間の5分間におさまりホッとしていた。今回のテーマは、僕をメインのキャラクターに使いたいらしく、一緒に連れられて行くことになった。「ペーパーリーフアートで交流するミュージアムづくり」のタイトルがスクリーンに映し出された。どうやら、ミュージアムを作りたいらしい。しかも2つのミュージアムを、リアルとネット上に立ち上げるようだ。そこで、僕を案内役のキャラクターにするからよく聞くように連れ出したのだ。マサは、アート講座など人前で話す時は、トレードマークになった赤の蝶ネクタイをすることにしていた。順番が来る前に、自分で締めることにしたが、秘書にも確認してもらった。下のシャツのボタンをかわないと、キレイじゃないからと、ボタンをかったのがいけなかった。プレゼンが始まり1ページが終わるころ、なんだか息苦しくなってきた。マイクの位置も下過ぎたので、ますます首元が苦しくなって声がかすれていくのがわかった。用意したコメント用紙も、回りが薄暗くて読みにくい。3つの悪条件が重なって、いままで経験したことがない状況に陥っていった。声が枯れる、文字が見えにくい、時間が経っていく、プレッシャーとの戦いに、意識が遠のくのを感じるようになった。さすがの秘書もたまりかねて、小声で文章を読み上げる。ハッと気付いて、今はここなんだと冷静さを取り戻そうとしたら、終了のベルが鳴っていた。それでも残り3ページをほとんど省略して話しを終えた。僕も久しぶりにマサが動揺する姿を見上げていた。