旅するペーパーくん

ペーパーくんの癒しとヒラメキの日々

『物語り』でコンペ

マサは、平日に戻りまた回顧していた。浜松のS社からチョコサンドクッキーのデザインコンペがあった。S社はチョコスナックのヒットにより仕事がかなり増えていた。もうひとつの売れ筋の箱入りクッキー商品のデザインリニューアルの依頼だった。競合のD社がずーとパッケージを納めていたが、コンペにしてデザインが良い方に仕事を出すのが通例だった。またまたチャンス到来だと、マサは意気込んだ。この間作った『物語り』のコンセプトを使ってみようと考えていた。名古屋のセントポール大学出身のパッチリ目の女子は、S社を担当してくれていた。『物語り』のコンセプトでデザインすることに理解を示してくれ、すぐにチョコサンドクッキーの『物語り』を考えてくれる機転の利いた女子だった。チョコといえばベルギー、ワッフルやスペキュラースというクッキーもあり有名な都市を『物語り』にしたいと話してきた。煉瓦造りの建物や歴史的背景もあり、スイーツのイメージにぴったりの『物語り』はもう語るまでなかった。チョコサンドクッキーのシリーズ3点のダミーが仕上がって、プレゼン前に営業のウメちゃんと打ち合わせをした。競合D社の情報によると、かなりたくさんのデザインが提出されたらしいことを伝えてくれた。こちらは1パターンの展開3点のみ、もっと数をだすようにウメちゃんは要望してきた。マサは、自信たっぷりと『物語りのコンセプトがあるから大丈夫だ!』と答えて要望を断った。マサが『物語りコンセプト』の企画書をプレゼンし、パッチリ目の女子がデザインダミーを説明した。クライアントの反応はすこぶるよく、後日の結果を聞くまでもなくコンペに勝利したと確信した。競合D社からごっそりと箱のパッケージを奪取できたのは痛快だった。ここでもマサは、箱とペーパーとの縁を強く感じていた。