旅するペーパーくん

ペーパーくんの癒しとヒラメキの日々

『紅の豚』のような

マサに、ちょっかいを掛けてくる『紅の豚』のような営業部長がいた。マサが東京に行く前に、営業がいやでしょうがなかった営業時代の上司である。マサの大学の先輩でもあり、相撲部だったこともあり、ユニークで楽しい人だった。営業時代は、朝から机の横でシコを踏んでおり、マサにもやるように指導され、その内に突っ張り稽古の相手にもさせられた。顔は色白で、朝はお酒が残っているのか赤ら顔になっており、いかにも『紅の豚』そのものであった。当時は営業課長だったので、よく同行してクライアント回りに付き合ってくれた。『君は岐阜だから、岐阜をアプローチするといい』と岐阜の商工会議所に入っていった。今では無理だが、分厚い会員名簿を購入するように言われた。『こんなにターゲットになる会社がある。大きなところからアプローチしな』とポーンと本を手渡してくれただけだった。それ以来、地図を片手にしばらくは、飛び込み営業だった。ドアを開けるまでも営業車の中で、何を話そうか30分近くも車内にいたこともザラにあった。ひとつだけ気になった会社があり、名前もオシャレな掃除道具をリースしており当時CMでよく聞いていたので飛び込んでみた。運良く、包装と放送を間違えたらしくCMや広告の担当者に会えることができた。カチコチだったマサは、震える声で名刺交換した。『なーんだ、放送じゃないんだ』と『包装なんです。何かありますか?』CMと名簿の情報しかなく、失礼な質問だった。素人営業と察してか、すかさず担当者は『君はどこの大学?』こちらを伝えると『へー神宮球場いった?僕は反対側の都の西北だよ。』と一気に親近感が湧いてきた。『よかったら、このラップをオリジナルで作りたいけど』といきなり紙のパッケージの引き合いだった。次回、上司の『紅の豚』を連れて行こうとアポの約束した。