旅するペーパーくん

ペーパーくんの癒しとヒラメキの日々

『予知』はできる?

マサは、しばらくクレームもなくゆったりと生活していた。NHKの『半分、青い。』で東日本大震災のシーンが出てきたが、マサもちょうどその頃に三ケ日にいた。会社の食堂でテレビを見ていたが、まるで映画のシーンのようで現実とは思えなかった。湖畔にあったマサのアパートも埋立てた場所だったので、余震のたびに建物が大きく揺れてベッドを思わず押さえていた。湖から津波がきたら逃げられるだろうか、不安な日が続いていた。津波の高さが想定以上になり福島原発が壊滅的になったのは人災なのか、仕事がら『予知』はできなかったのか考えていた。そんな頃、営業マンから電話があった。『コンビニで、箱と中身が違う消費者クレームだ』と信じ難い言葉だった。コンビニではPB商品がかなり多くなっており、デザインは同じで商品名だけを変えて安く売る手法がとられていた。今回のクレームはこのコンビニのスープのPB商品で、ちょっと見は区別ができなかった。最もあってはいけない重大なクレームだった。しかも、消費者の手に届いてしまっていたから最悪の事態だった。東日本大震災に匹敵するようだとマサは感じていた。まずは火を消さなければならなかった。製造したすべてのスープ商品を回収することになった。なぜそのようなことが起きたのか、他の製品は大丈夫か、再発しないのか、すべてを網羅して、翌日には報告しなければならなかった。製品の入った段ボールにはケースナンバーが記載されていたので、発生ケースの履歴から原因が特定できた。その発生場所は、いつもマサがいる部屋の横にある検査室だったから『まさか』と驚きを隠せず『予知』は全くできなかったことに反省していた。翌日、営業マンと一緒にクライアントに報告に行った。事前に厳しい人だと聞いていたので、神妙な顔で面談を待っていた。『あっ、先生』とびっくりしたように声を掛けられた。昨年やった包装管理士講座の教え子だということがすぐわかり、先生キブンで報告する少しだけ救われたマサがそこにいた。