旅するペーパーくん

ペーパーくんの癒しとヒラメキの日々

『つ』って駅

マサは、結局ひとりで近鉄特急に乗って三重の営業所へ向かった。初めて近鉄特急に乗ったが、ほとんどが旅行客のようで楽しそうに話す女性2人連れが多かった。出発すると間もなくワゴンを引いた女性が、『おしぼりどうぞ』と手渡してくれた。マサも半分くらいは旅行きぶんになっていた。マサは乗る前に、コーヒースタンドでカップ入りのホットコーヒーを購入して持ち込んだ。おしぼりで手を拭いてから、砂糖とミルクを入れてかき混ぜてホッと一息ついた。企画書に目を通してプレゼンのシミュレーションをイメージしていた。とにかく特急電車だから早い『まもなく、つー』、残りのコーヒーを飲み干して出る準備をしたら、降りる人が意外と多く列ができていた。ここだな、週1回通うところはと駅の看板に目やると『つ』のひらがな表記が、空いてる方向は?思わず左といいたくなる文字に拍子抜けしてしまった。駅には営業マンが迎えに来ており、笑顔が印象的で眉毛が太く繋がっているほどの『郷ひろみ』に似た男子だった。『はじめまして』と関西なまりの地元出身の入社2年目の若手だった。『私がℹ︎社を担当してます。よろしく。』彼には今でも伝えていないが、紅のブ長からは『どうしようもない奴だけど、いい奴だから』と聞いていた。第1印象は、一生懸命に真面目に話す姿に好感を持った。営業所はクルマで5分、丸の内ビル9階まで上がると、伊勢湾が一望できるすばらしい眺めに驚いた。まずは所長に挨拶、所員は5名で内勤の女性が『こんにちは』とやはり関西弁まじりの言葉で親しみがもてた。企画書を広げて打合せが終わると所長が『せっかくマサが来たので懇親会をみんなでやろう!』と近くの居酒屋に集まった。ずいぶんみんながゆっくりしており、駅の看板『つ』のように拍子抜けしたマサがそこにいた。