旅するペーパーくん

ペーパーくんの癒しとヒラメキの日々

『バブル全盛期』はどこに

マサは、東京から名古屋に戻ってきたのは『バブル全盛期』の頃だった。会社は名古屋の栄にあり、ビルの8階のワンフロアを借りるほどで勢いを感じた。目の前には、愛知県美術館テレビ塔があり、後ろ側には女子大小路という歓楽街があった。東京と引けを取らない場所であると感じていた。名古屋でのオリンピックはなくなったものの博覧会が花ざかりで、岐阜未来博や名古屋デザイン博のパビリオン展示などでスタッフが忙しくしていた時代でもあった。東京から帰って来たマサは、何ができるんだろう?沈黙は金のままだろうか? いろいろな人が話し掛けてきた。上司からは、名古屋での役割の説明があったが、東京で先輩主任から教わった仕事が役割になくガッカリしていた。恐る恐るお言葉を返すようだと前置きをして『半分、半分でいいから教わった仕事も』と懇願した。しょうがないなあと呆れ顔ではあったが、了解してくれたので助かった気分にどういう訳かなっていた。マサは、東京での3年間で先輩主任から学び、しかも後輩から教えてもらったデータでマーケティング手法を編み出したので、ひとりでも何でも出来そうな気がしていた。『バブル全盛期』だったのか、気に掛けてくれてた先輩に、さっそく女子大小路の歓楽街に誘われて飲みにいった。今思えば、そうとう肩に力が入った姿を見て、もっとリラックスすればいいのではと暗黙のアドバイスだったのだろう。そうして名古屋での第一歩が『バブル全盛期』の中で始まった。