旅するペーパーくん

ペーパーくんの癒しとヒラメキの日々

スタートライン

マサは、FMラジオ収録の前にテレビを見ながら話す原稿を整理していた。オリンピック代表選考の男女別々のマラソン中継を切り替えながら見ていた。男子は福岡国際マラソン、女子は名古屋ウィメンズマラソンだった。珍しく9時からEテレでの放送が男子マラソンで、いつもなら日曜美術館の番組だがそのまま見ることにした。9時15分のスタートだったが、少し強い雨が降っていたせいでピストルの合図がならない。数分待たされた後にスタート時間が10分後に変更された。選手は一旦屋根のある所に避難することになった。気持ちを切り替えて選手たちはスタートラインに立ってピストルの合図を待つと今度は小さな音ながらパチンと鳴り走り出した。マサも現在の心境に似ていると重ねてテレビ中継を見ていた。4月からレンタルスペースを借りて、新たなスタートラインに立とうしている。コロナウイルスの影響でイベントはしばらく無理な様子。更にこれまで働いてきた会社から後任選定に猶予期間がほしいと退職日延長の打診がされていた。このままだとスタートラインに立てなくなると悩んでいた。たまたま金曜日は同級生2人と会食の約束をしていた。『JAのプレゼンはどうだった?』良きアドバイザーのイッチャンの一番の関心事のコメントだった。『3月21日のアート講座はどうする?』良きパートナーのアラキンはコロナウイルスの影響を心配してくれた。『スタートラインをどうしようか悩んでる』と素直な気持ちで打ち明けてみた。『やることが無いんだったらいいけど』と同じフレーズを2回話すイッチャンの言葉に、予定通りのスタートラインで走り始めることをマサは決意した。