旅するペーパーくん

ペーパーくんの癒しとヒラメキの日々

英会話

マサはNHKの朝ドラは欠かさず見ていた。「カムカムエブリバディ」というタイトルは、いかにも英語が絡むという内容で脚本されている。ヒロインが初めて3人になって、いよいよ3人目が登場することになっている。上白石萌音深津絵里川栄李奈とそれぞれが親と子になるストーリーだ。男女の関係がラジオ英会話を通じて深まり、そして英語をマスターして話せるようになっていく。今日の朝ドラは、1週間でラジオ英会話を止めてしまった小学生の「ひなた」が初恋したアメリカ人の男の子前で、一言も話せずショックを受けるシーンだった。この朝ドラが始まる少し前から、マサも英語が話せるようになりたいと「テレビ英会話」の10月号を購入していた。夜の11時20分から10分間と再放送で朝の10時15分からの両方を見ることに決めた。夜はたまに寝てしまい見過ごすこともあるが、再放送もあるので今も続けている。英語を話したいというキッカケは、アートイベントにたまたま来てくれたスペイン人のカップルとの出会いからだ。記録によると2020年6月12日にメディアコスモスのかんがえるスタジオでアート体験をしてくれていた。男性の方は自転車の絵と漢字を書き、女性の方は自然の中にいる姿のようだった。ウサギの耳を紙の葉っぱで作り、カチューシャに貼ってバニーガールのように頭に付けてもらったことを思い出す。この時の動画は、良きパートナーのチカチャンが撮影してくれ、今でもホームページで見ることができる。英語が話せればもっとコミュニケーションできたはずと反省していた。コロナが落ち着けば、インバウンドで外国人が日本にやってくるはずだ。オンラインで英語が使えれば、海外の人ともアート講座でつながることができる。ニューヨークやパリで個展や講座を開くにも英会話が必須だと、マサは夢を膨らませていた。

パネル展

マサはコロナのまん延防止措置により、予定していたイベントも中止になりモヤモヤしていた。2月6日にメディコス祭りに出店準備をしていたが中止のメールが入っていた。2月11日〜19日までは「NPO活動パネル展」があり、こちらは展示だけなので開催見込みのようだ。メディアコスモスは昨年5月に市役所が横に立ったことにより、人通りが多くなっている。活動内容を知ってもらうために、パネル一枚とはいえ大事な機会だと考えていた。これまでの活動を整理して、これから何をやっていくかをパネルに表現することにした。一つ目はアート講座は今までの「大人のための講座」に加えて「オンラインでつながる講座」を平日に開設する。二つ目は「紙の葉っぱのミュージアム」は自主イベントは中止して、オファーがあれば出張する。三つ目は新たな試みとして「みんなでつくるペーパーリーフ貼るアート」と名付けた参加型BIGアートを展開する。既に青少年会館の入り口で実施する準備をしているが、他の公共施設への展開も考えられると意気込んでいる。このパネルには記載していないが、ポイントカードを作る予定でいる。参加のモチベーションをアップするために20ポイント毎にプレゼントをする仕組みで、作品の優劣によって付与ポイントを加算もする。月毎に最優秀賞3P、アイデア賞、テクニック賞、ユニーク賞にそれぞれ2P、その他参加者に努力賞1Pとする。月間最優秀賞はPAPER LEAF ARTの NO.1を略して「P-1大賞」としてホームページで次の月の初めに発表をする。これら新しく企画した文字を、良きパートナーのチカチャンを通じてロゴデザインしてもらった。パネル展のパネルが完成して、満足気にパネルを見つめるマサがいた。

2枚切り

マサはまた2日後に事務所の扉を引いて、挨拶をして入った。「こんにちは」と言うや否や、元教師の横さんが待ち構えていた。「使い終わったポスターでも大丈夫ですか?」とアート材料に使ってもいいかを聞いてきた。「紙ならなんでもOKです」と想像してなかった質問にアッサリと返事をした。確かに廊下の掲示板に、イベント告知のポスターが何枚も張ってあった。期限が過ぎたらゴミになるだろうと思っていた。「たくさんポスター取ってあるので使えると嬉しいです」と素直に話す。2日前に机に置いたペーパーリーフのテンプレートを使って、ポスターの裏側にシャープペンのラインを入れた状態の紙がたくさんあった。「テンプレートありがとう。ちょうど8人の小学生がいるから、やってもらえる!」と土日に勉強に来る子供達にもやってもらうことを伝えてくれる。横さんの机の上には、もうたくさん切った紙の葉っぱが紙の箱に入れられていた。しばらくすると横さんは勤務時間が終わり帰って行った。「時間があれば、こちらを切ってもらうと助かります」とメモと一緒に、ラインの入ったポスターの紙とハサミが置いてあった。1枚ずつ葉っぱ型に切り出したところで、ラインのない白い紙がその下にあるのに気が付く。ポスターを四角に切った紙が同じ大きさだったので、2枚一緒に「2枚切り」することがわかった。さすが元教師らしく、ここでも頭の良さに感心させられた。葉っぱ型に切ったポスターの紙を触ってみると、お菓子の箱にない滑らかな感触だった。カールすることもなく平らな状態なので、糊付けや貼るにもやりやすいと感じる。改めて紙の厚みをネット検査すると、お菓子の箱は0.4㎜でポスターは0.14㎜であることを知る。ポスターの厚みが三分の一であることから「2枚切り」が可能だと、珍しく数字で理解するマサだった。

塗り絵のような

マサは更に運営委員会の議事録を読み返していた.1ヶ月前の5月13日にもアッちゃんとミエちゃんが参加してくれていた。高校の1年に同じクラスになった同級生で、当時に戻ったような感覚になっていた。「子供たちは塗り絵が好きだから、同じようにできないかしら」と難題を投げかけるミエちゃん「塗り絵の下絵の上に透明シートを乗せれば、パターンは繰り返し使えるかも」「名画や自分で撮った写真もパターン集にしたらどう?」とアッちゃんも付け加えた。このオーダーにさっそく思案してみることにした。テレビのプレバトでやっている消しゴムハンコが目に留まる。プチッテの葉っぱの形をライン状に消しゴムで彫ってみた。黒のスタンプ台に押しつけた後に、白い紙に消しゴムをスタンプしてみた。「なかなかいい!」と自画自賛しながら、女性の顔をイメージしながらスタンプを何度も押していく。スマホで撮影してグループLINEに画像と「いいのが出来ました」とコメントを添えたが、メールへの返信コメントがなかったので次の運営委員会に作った女性の顔と消しゴムハンコを持参することにした。「あまり可愛くないね!」と歯に絹着せない言葉は、同級生だからの発言はキツくもあったが嬉しかった。「塗り絵のような」のキーワードがずーっと頭の中から離れずにいた。このことが、最近知り合いになった職員のハットさんと元教師の横さんからのBIGアートに結びついていったと思った。ゴッホのひまわりをプロジェクターで障子紙に投影して木炭で描いた絵は、まさしく「塗り絵のような」下絵の一枚となった。早くミエちゃんに見せて感想を聞きたいとマサは思った。

テンプレート

マサは毎月1回の運営委員会の議事録を読み返していた。5人の運営委員が共有できるようにグループLINEを作り、議事録もノートに残していた。去年の6月23日の記録によると、運営委員会の後にメディアコスモスの横にあるスターバックスに寄っている。Facebookページのカフェ研究会にも抹茶ラテの画像といいアイデアが出たと投稿されていた。運営委員会のアッちゃんとミエちゃんの3人で向かい合わせの席に座る。「星型や数字を鉛筆でラインを入れるプラスチックシートって何んて言ったけ?」更に続けて「ペーパーリーフ型にできれば、いろんな紙にラインを入れて切ってもらえるかも」とミエちゃんは真面目な目付きだった。ミエちゃんは図書館の司書をしていたこともあり、現在は子供達に絵本の読み聞かせをしていると話してくれる。「それはいいアイデアだね。薄いシートならCADで抜けるよ!」と以前の仕事経験からマサは即答した。「プチッテの残りの枠ではダメかなあ?」と聞くと「絵柄を好きな位置にラインを入れたいので透明なシートがいい!」ともうイメージができてるようだった。さっそくプチッテを製造してもらったオーケーさんにLINEをすると「柔らかいプラスチックならできます。」と素早い回答に喜び勇むのがわかった。1週間後にオーケーさんの工場に確認に出向いて行った。透明な葉っぱ状のシートを20枚差し出して「これでいいかなあ?何に使うのかなあ?」の質問に「そうでしたか。葉っぱではなく外の枠は残っていませんか?」とLINEのコミュニケーションの難しさを知らされた。「プラスチックシートが柔らかいのと厚みが薄いので、今回は諦めます」と返答をしていた。その後、運営委員のミエちゃんから「透明じゃなくてもいいかも。プチッテの残り枠なら使えるかも」と自分のアイデアを取り下げるメールが届いた。同じアイデアがつい最近に元教師の横さんから出たところだったが、言い間違いのないように名前をつけることにした。「ペーパーリーフのテンプレート」と名付けたメモと一緒に、プチッテの残り枠10枚を横さんの机の上に置いて帰路に向かうマサだった。

アイデアが次々と

マサは最後のハードルを超えたので、順番にアート材料を持ち込むことにした。ペーパークラフトになった紙の葉っぱは、1シートに20個の葉っぱが付いて「プチッテ」と呼んでプチッと千切ると1枚ずつ葉っぱが取れるものだった。グリーン、イエロー、オレンジなど全部で16色の葉っぱがあるので、絵の具と同じように好きな絵が描けるアート教材となっている。手軽に使ってもらえるように、16個のプラケースに千切ったプチッテを入れて「ペーパーリーフキット」として貸出しセットを用意している。「ペーパーリーフキット」をトートバッグに入れて自転車のカゴに乗せて、青少年会館へ向かった。「このキットは無償で貸出しできます」と入り口演出担当の横さんに差し出した。打合せテーブルに広げて置くように促され「明日みんなが来たら見てもらいましょう!」とにこやかに話してくれた。その2日後に横さんから「コロナのまん延防止措置が終わらないと置けないようです」と館長の指示があったらしく曇った顔色に「しょうがないです」と平静さを保って返事をした。作ったばかりの障子紙キャンバスはいつに持ち込めるか心配になってきた。USBにゴッホのひまわり画像を保存していたので、A3サイズにカラープリントしてもらい、ラミネート加工をして打合せテーブルにキットの上に一緒にした。またその2日後、席に着こうとすると横さんから声を掛けられた。「みんなからアイデアが出てきましたよ!」と今日はいつもよりにこやかだった。館長からは「16色の紙の葉っぱは混ぜた方が選ぶ楽しみがあるかも」職員のハットさんからは「裏面にアタリがあると喜ぶかも」と。横さんからは「障子紙キャンバスの大きさはどのくらい?」と聞くのでサイズを伝えると、机にメジャーを充てると机より一回り大きいと認識してくれた。「プラケースに入ったプチッテだけでは足りないかもしれないね!」もう自分で集めたお菓子の空き箱を見せながら「プチッテから葉っぱを取った枠をいただけませんか?」とさすが元教師らしい賢いコメントに感心した。お菓子の空き箱の裏側に、葉っぱの残り枠を鉛筆でなぞれば、同じ形の葉っぱができることを思い付いたようだ。「ハサミで葉っぱを切るのも楽しいかも」とアイデアが次々と出るので、立ったまま呆然とするマサだった。

障子紙キャンバス

マサは早速ホームセンターに障子紙を買いに行った。昔はどこの家にも和室があり、いたずらで穴を空けると叱られたこともあった。売り場にはたくさんの柄やサイズがあるのに驚いた。50号サイズのキャンバス木枠に合う障子紙は、95cm幅の10m巻の1本を単位に販売されていた。10個分のキャンバスができてしまうが買うことにした。ロッキーeスタジオにキャンバス木枠を持ち込んで、ロール状の障子紙をまず当ててみた。天の端を紙テープで止めた後に木枠の上に障子紙を這わせて長さを調整して、もう一方の端をおおよそのところでハサミでカットした。地の端を強く引っ張って木枠に仮止めした。その次は左右の両端を木枠に押しつけて紙の筋を入れた後に、同じように仮止めテープで押さえる。最後に天、左、右、地の順番で紙テープで貼ると出来上がった。まさしく、やったことのない「障子張り」の初体験となった。実は「障子紙キャンバス」のヒントになったのは、青少年会館の中にある和室の窓際にある「障子戸」を開け閉めしている内に思い付いたのだった。出来上がった「障子紙キャンバス」をイーゼルの上に乗せると、もう画家になった気分になった。企画書を作る時にMacに取り込んだ「ゴッホのひまわり」画像をプロジェクターで投影することにした。思った以上に「障子紙キャンバス」は大きく、プロジェクターをかなり後ろから映し出す必要があった。部屋の灯りを消してキャンバスに映ったひまわりを見ると、油絵で使っていた木炭で画像のアウトラインををなぞってみた。あっという間にスミ1色のひまわりの絵になった。この上に紙の葉っぱを貼れば、ペーパーリーフ名画が出来上がると想像するマサだった。