旅するペーパーくん

ペーパーくんの癒しとヒラメキの日々

ランチの練習

マサは、久しぶりに昼食を作ることになった。秘書の妻にフリーになったら、一週間に一度は昼食を作る約束をしていた。きのうはカフェの後はスーパーに付き合うと『あしたの昼は頼むから!』と、マサが出来そうな焼きそばの材料を買ったことを伝えてきた。三ケ日の単身赴任生活での登場頻度の第一が焼きそばだった。静岡では富士宮やきそばが有名で、麺と濃厚ソースと肉天かすと削り粉が2食分セットされて販売されていた。豚肉とキャベツ、人参、ピーマン、玉ねぎを刻んで炒めるだけだから、簡単なメニューだった。富士宮やきそばは、地域起こしのために誕生したB級グルメで、B-1グランプリでも優勝したことは知っていた。少しだけ値段は高いが、美味しそうな写真につられて買ったのが最初で1ヶ月に2回は購入するほどだった。きょうの焼きそばは、1食分の袋入り麺を2玉使うだけで、味付けはある調味料でやらないといけなかった。まずは野菜を刻んで、豚肉を冷蔵庫から出した。準備完了して、包丁を洗って戻そうとすると左手の薬指に引っかかってチクリと痛みが走った。やってしまった出血間違いなしと、蛇口から水を傷口へ流すように洗った。その後、何度も傷口を見ていたが血が出てこないのが不思議だった。フライパンに火を付けて油を垂らした後に、人参を先に炒め豚肉を加熱、ピーマン、玉ねぎを入れる頃には、人参が黒く焦げているのがわかった。やってしまったガスの火加減が全開となっていた。『焦げているね!』とひとこと妻が言ったが、そこそこの味に、なんとかランチを終えてホッとするマサだった。