旅するペーパーくん

ペーパーくんの癒しとヒラメキの日々

変わるもの変わらないもの

マサは、車のエンジン音で目が覚めた。土曜日だが、目の前にあるビルの解体工事が始まるから作業員がやってきたからだ。8階建ての解体は大詰めで基礎を壊し始めた。大型クレーン車のドリルが地面を叩いているらしい。地震のような振動が伝わってくる。朝ドラの時間帯だから朝の8時からこの振動はきつい。ボリュームをいつもの倍に上げても聞こえるので、窓や扉を閉めることにした。それでも朝ドラの駆け落ちした男女の別れのシーンには涙が止まらなかった。8階建ての大きなビルがなくなるのも感慨深い。洋裁学校を創設した女性理事長は女子大学まで作り、このビルは学園本部となった場所である。マサは、前に住みながら多くのファッショナブルな女子達を見てきたことになる。これも良きアドバイザーのイッチャンから、女子がいるとイキイキすると言われるゆえんかもしれない。昼近くになると秘書の妻が『工事がうるさいから食べに行こ!』と先週に引き続き外で食べたいと出掛ける準備をしていた。『歩いて行くよ!』と15分歩く店を指定する。『冷やしたぬきそば』が名物にもなっていて、駐車場は入るクルマで渋滞になっていた。名古屋ナンバーもあり、観光客らしき人で店の中は大入り満員だった。メニューはいろいろあるが、『冷やしたぬき』とみんなが注文する。中年男性は『冷やしたぬきダブル』と頼むと1分経つか経たないかで大きな丼が置かれた。スマホでいきなり撮影して、指を盛んに動かしている。ワサビの量が半端なく多いのも特徴で、全部混ぜてもいいが、鼻ツンは間違いない。締めは蕎麦湯を入れて飲み干すと満足感に達する。

『冷やしたぬき』は、変わらない岐阜の名物と言えるとマサは思った。