旅するペーパーくん

ペーパーくんの癒しとヒラメキの日々

『紙粉レス段ボール』の開発

マサは、1週間後『技術センター』のSさんにテストサンプルを持っていった。その場でテスト評価方法を見せてくれた。ダンボールの上に10センチの金属片を乗せて10分間振動させて、紙粉の発生量を測定するものだった。『コーティング』の量を3種類変えたダンボールを渡してテストをしてもらうことにした。Sさんからは、普通のダンボールも比較のためにテストする旨を説明を受けて別れた。翌日Sさんから電話が入った。『すごい結果が出ました』声が少し上ずっているのがわかった。『紙粉がほとんど出ないんですね?』と話すと、隣にいたオッチーさんが代わるようにうながした。『Sさん、やったじゃないか。すぐ行くから』と電話を切った。『これはどえらいことだ』と東京出身のオッチーさんが名古屋弁を話したので可笑しかった。Sさんに会うと、技術者だけに分析データをグラフ化しており説明してくれた。『コーティング』の3種類の違いはほとんど見られず一度塗りだけでいいこともグラフで理解できた。オッチーさんは『ありがとう。資料はいただくよ』とペーパーを掴み取るようにしていた。帰りのクルマの中で『すぐ特許を申請しよう』と興奮が冷めないようだった。『この新しいダンボールの名前は何がいいだろうか?』ちょうどその頃、ワイヤレスとかコードレスが走りだったので『紙粉レス段ボールはどう?』とマサが言うと『それでいこう!』と即決だった。会社に戻り、法務部へペーパーを提出し『大きなビジネスになるから、すぐ手続きをしてくれ!』と社内でもコーティング技法を発揮するオッチーさんだった。その足で営業本部長に報告に行くと、不思議そうな顔をして2人を見上げて『ご苦労様』と一言だけ言葉をもらった。翌日2人は呼び出され、事業部長室で営業本部長からの報告に同席した。『これは何て言う名前なんだ?』と家康風のトップが語ったので、震えながら『紙粉レス段ボール』に御座りますると言いそうになってしまうマサがいた。