旅するペーパーくん

ペーパーくんの癒しとヒラメキの日々

『クライアント』の顔

マサは、美味しそうなクリームの甘い匂いを嗅ぎながら門を入っていった。守衛室で入門証をもらいスーツの胸ポケットに挟んだ。『さー行くぞー』と心の中で気合いを入れると身震いがしていた。入り口を入ると左側にアイスクリームBOXがあり『ご自由にお取り下さい』と表示を見て、派手好きゴー君は『帰りにもらっていきましょう』とマサの緊張感を察したのか、笑顔でほぐしてくれた。しばらくすると『おまたせしました』と関西弁混じりの挨拶で、丸顔でニッコリ微笑んでくれた姿はエビスさんのようで、まさしくエビス顔だった。名刺交換が終わると派手好きゴー君は、マサが東京で商品企画をやってきたことや、ナショナルブランドの企業名をポンポンと出すので冷や汗が出てきていた。『挨拶代わりに』と企画書を差し出した。エビスさまは、ペラペラめくって微笑んでいるのがわかった。マサは、ひとつひとつ丁寧に説明始めたが、先程の冷や汗が止まらず企画書の上にポタポタと落ち出してしまった。のちに企画部の後輩が『脳汁』と名付けてくれるほどで、たびたび重要なところで溢れ出していた。しかしこの『脳汁』が出たときは、決まって『いい結果』につながることも後になってわかってきた。ひと通り説明が終わると、エビスさまから『こういう手書きの企画書が欲しかったんだ』とマサを見つめるように話し始めた。それぞれのアイデアよりも、お金がかかってなく、それでいて内容がよくわかる企画書を喜んでくれた。あずきバーはなぜカチカチなのか、たい焼きアイスの開発秘話なども話してくれた。たい焼きアイスは、このエビスさまが開発して誕生させたことをこの時初めて知った。この時エビスさまは、悩みを打ち明けてくれた。『うちはあずきの商品しか売れない』と、確かにあずきバーやたい焼きアイスは、あずきがたっぷりと使ってある。『なんかいい方法はないだろうか』これがマサに与えられた宿題だと感じた。エビスさまの顔は、期待感を含んでおり、まん丸の瞳はにこやかでもあり鋭く光っていた。汗をいっぱいかいたので、入り口のアイスクリームBOXからあずきバーを一本もらい、クルマの中でかじっるとカラダのホテリがやっとおさまり、マサに戻れた気がした。