旅するペーパーくん

ペーパーくんの癒しとヒラメキの日々

Little Museumの扉を開けた二人の女性

10月6日にLittle Museumをオープンさせたマサは、月・水・金と必ず12時になると、ミュージアムのロゴが入ったのれんを表に出して開館していた。暖かい時は外に出て中を見てもらえるように促していたが、12月も終わりに近づくと、家の中から外行く人を眺めているようになった。それでも表の看板を見ると立ち止まってくれる人が、少しずつ増えてきていた。3時頃になると2人の30代女性が看板の前で話している様子がわかったので、扉を開けようとしていたのでこちらから開けてあげた。「いらっしゃいませ。紙を使った作品を展示しています。小さな作品の体験もできます。」と説明すると「カワイイ!子供が喜びそう!」とかなり興味深そうなコメントをもらい嬉しくなった。「あれはなんですか?」とこちらが説明していないモノに質問がありびっくりさせられていた。まだ作ったばかりの変装パネルに興味を示してきたからだ。変装パネルとは、透明パーテーションに紙の葉っぱで作ったカツラやメガネや鼻やヒゲが貼ってあり、自分の顔をパネルに近づけると変装してインスタ映え写真が出来上がると仕掛けを作っていたものだった。「はい、こちらのパネルを顔に近づけるとインスタ映え写真ができます。」と言うと、もう一人の女性がスマホを取り出して「はい、撮るよ!」と二人とも笑いこけていた。「メガネだけでも、輪ゴムを耳に掛ければ面白いですよ!」ともう一枚写真を撮影した。今度は女性が交代して同じことをやってくれた。マサはLittle Museumオープンと同時にインスタグラムを始めていたが、なかなか来館への促進には至っていなかった。二人の女性が帰る時に「このLittle Museumののれんカワイイ!」「さっきの写真をインスタにアップします!」と今時の若い人達に、少しだけ何か刺さったと実感するマサがいた。

Little Museumオープン前夜

マサは自宅の駐車場スペースを改装して、LittleなMuseumを完成させてホッとしていた。気の早い建築会社のホリ社長からお祝いの花が届けられた。オープンは明日だが、用事があって来られないのでみずからクルマで運んでくれた。中を覗くと「作品がきれいに並んでますね!」とお褒めの言葉にニンマリした。床と壁と天井の張替え、スポットライトやピクチャーレールやエヤコンの設置まで、イメージ通り完璧に仕上げてくれた。追加オーダーになったが、入り口ののれん取付けはピクチャーレールの設置のアイデアで解決してくれた。オープニングイベントとして、テープカットを準備している。事前にパンフレットを友人知人に渡しているが、「テープカットはないの?」とオープン前からいろんなオーダーがあり苦慮している。「YouTube見れば紙を使った略式の方法もあるよ!」と気軽にアドバイスもくれた。さっそくホームセンターで赤い花紙と紅白テープを入手して大小4つの花を作成した。大きい花は紅白テープに貼りテープカット用に、小さい花は来賓の胸にピンで付けてもらうことにした。入り口に購入したばかりの椅子を2脚を運びだし、両側に紅白テープをつないで高さを確認した。オープニングの挨拶の後に、来賓を紹介してテープカットをしてもらう。その後Little Museumの中にお客様を案内して、缶ジュースで乾杯をする。マサはオープニングイベントのスケジュールをノートに書き出して床に着いた。

ポイントカード

マサはお昼近くになると、近所のお弁当屋さんに向かう。コロナ禍にテイクアウトでお店の前にお弁当を並べる店が増えている。歩いて行ける範囲で4つあるので、毎日でもお好みで変えられるからいい。昨日は有機野菜など素材にこだわったお弁当専門店。11時オープンで少し出遅れると行列になり外に並ぶほどの人気の店だ。家から一番近い店は、目の前で好きなおかすをいれてくれる最もコスパのいいお弁当だ。少し歩くが洋食レストランのテイクアウトは最も美味しい。嬉しいのはポイントカードでスタンプ1個を押してくれ20個で1個のお弁当をサービスしてくれる。1ヶ月に1度はサービス券ももらえる。もう少し手前には、夜は居酒屋になる店頭でお弁当を並べている。暖かいご飯を別の保温容器に入れてくれ、肉類のおかずがメインでボリューム感がある。こちらの店でも最近ポイントカードを始めた。他の店を調査しているのか、10個のスタンプで1個のお弁当をサービスすると書いてある。スタンプを押してもらうポイントカードは、何故だか癖になるから不思議だ。子供の頃の夏休みラジオ体操の出席カードから刷り込まれているのかもしれない。お弁当のポイントカードをキッカケに、4月からのアート講座に応用することを決めていた。講座やイベントに参加してくれた人にスタンプを1個押してあげる。20個で作品集や講座参加券をプレゼントする。お弁当でも20個のスタンプはなかなか貯まらないのを経験している。更にポイントが貯まるように「P-1大賞」と名付けて、作品の内容により表彰ポイントを付与してスタンプしてあげることにした。翌月の初めに、ホームページ上で「P-1大賞」とアイデア賞、テクニック賞、ユニーク賞を発表する。次回の講座やイベントに来てもらった時に、ポイントカードにスタンプを追加で押してあげる。どんどんスタンプが貯まっていくと「また来たい!」とリピーターになってくれないかなあと、お弁当屋さんのポイントカードを眺めるマサだった。

支援ブース

マサは今日もメディアコスモスに向かってデスクに座った。このデスクは支援ブースと名付けられたレンタルスペースで市から有料で借りている。8つあるデスクがパーテーションで区切られ、背中側にはロッカーが設置されていてLAN回線も利用できる。毎年12月の審査会で評価されたNPO団体が利用できることになっている。この4月から始まる令和4年度もマサの活動団体もデスクを使うことが可能になった。これで3年目になるが、この支援ブースを事務所の住所にした新しい名刺も作ることにした。名刺の参考にしたのは、同じブースにいる「赤いほっぺ」という団体から以前に名刺交換したものだった。親子に食育を教えることをイラストをあしらって伝える可愛い名刺で印象に残っていた。支援ブースの住所やナンバー、メールアドレス、URLなど細かく表示されている。今日はこのデスクでオンラインの運営委員会を開催した。グループLINEで議題を共有して、活動内容と課題について報告していく。メンバーのアラキンからも「新しい名刺をマンションの人達にPRします」と積極的な発言が嬉しかった。運営委員会が終わり議事録を配信した後に、スマホMacが連動して鳴った。「突然すみません。チラシを見て連絡しました」と女性の声が聞こえてきた。「ペーパーリーフアートは2〜3歳児でも出来ますか?」名刺の参考にした同じブースの赤いほっぺの代表であることもわかった。いつもは親子で食育を教えているが、違ったメニューを組合せたい旨も伝えてきた。「ショートメールにPCアドレスを送ります」と更に続けて話す。テーマ名、講師写真、サンプル作品をPCメールで送るように依頼される。2ヶ月先のイベントでスケジュールが空いているかを確認し、告知チラシの原稿の締切りが間近なことも話して慌ただしく電話が切られた。同じ支援ブースのご近所さんからのオファーに、名刺絡みで何か縁を感じるマサだった。

柔らかな光

マサは朝から大雪になり昼までステイホームしていた。冷蔵庫から冷凍スパゲッティと焼きおにぎりを取り出してレンジで温めた。食べ終わった頃になると、日差しが強くなり道路の雪もクルマが通った所は歩いて行けそうになった。愛犬のカフェを散歩に連れ出したが雪に慣れないせいか、いつもと違って動きが鈍い。犬も素足で歩くのは冷たいので、いやいやなのだと同情していた。3時を過ぎても日差しがあるので、自転車で青少年会館へ向かった。入り口まではキレイに雪かきがされていたのは、男性職員3人が朝から3回もスコップでかき出したそうだった。こんな大雪の日なので、すべて利用者がキャンセルになったことを伝えてくれた。ルーティンとなっている巡回もゆっくり回ることにした。上履きに履き替えて、2階の廊下を歩いて両側にある6つの部屋をカギを使って開けて中を確認する。1階に降りて9つの部屋を同じようにしている。その中に2つの和室があり、まだ3時過ぎなので部屋の中は明るい。障子キャンバスのヒントをもらったこの部屋は、妙に落ち着く。大雪の後の昼間の強い光は、障子から漏れる柔らかな光となって畳を暖めていた。障子の歴史を検索してみると、平安時代後期に平清盛が障子に穴を開けたエピソード記述によりこの時代が始まりとされている。木枠の他にカーテンのように垂れ下がるものなどいろいろあったようだ。障子紙は和紙と同じ原料を使った物や、パルプや化学繊維で出来ているものもあり現在は多様化している。本や雑誌や箱などは洋紙と言われ、不透明な白をベースにしている。和紙や障子紙は光を通すものがほとんどで、行燈や提灯などに使われて光の効果を演出するために使われている。この障子紙と葉っぱ状にカットした色付き和紙の組合せ合は面白いと思った。これは柔らかな光越しに見える新たなアートになるとヒラメキを覚えるマサが和室に佇んでいた。

隣りの町の同級生

マサは隣りの町の4回目のアート講座が終わった後に、高校時代の同級生を訪ねた。グルメ情報を教えてくれた3年生同じ組のタカちゃんから、卒業依頼会っていないキトちゃんに会いたいとLINEを送っていた。アート講座の1回目が終わり鰻を食べる前に時間があったので、小高い山にあるお寺から写メを撮って添付した。「同級生のキトちゃんのお寺はどこにある?」「その写真の南隣りにあるよ」とお寺の名前も教えてくれた。キトちゃんは後を継いでお寺の住職になっており、高校時代は同じ野球部だった。キトちゃんとタカちゃんとは同じ中学で野球部でつながっていた。2回目のアート講座の後に、突然寄ってみると「父は不在で留守にしております」と若くてキレイな女性が出迎えてくれ名刺を手渡した。突然行っても会えないとわかっていたが、4回目が最後になるので寄ることにした。石の階段を登って行くと、遠くの方でゴルフのスイングをするニット帽を被った男性の姿があった。どこか昔見たバットスウィングに似ていたのでキトちゃんであることがすぐわかった。「キトちゃん?久しぶり!」とマサの名前を名乗ると「おー、久しぶり!」と驚いた様子で、お互い誰なのか認識できて安堵した。アート講座でこの町にやってきたことや、同級生と一緒にこの活動していることを伝えた。「缶コーヒーでも飲むか?」と家の中に入ろうとしたので「ごめん、コーヒーアレルギーになって飲めない」と断わると引き返してきた。「この5月に野球部監督のN会があるからどう?」と聞くと大きく頷いた。N会のグループLINEがあるから招待することを伝えてLINE交換もなんとか交わした。「ところでゴルフのハンディは?」と聞くと片手を差し出したのでビックリ「プロ並みだね!」と言うと住職らしい眉毛の下がった表情が印象に残るマサだった。

隣りの町の楽しみ

マサは昨年6月にオファーのあった隣りの町へ向かっていた。「成人学校講座」と名付けられたアート講座でマサの活動を新聞で見た公民館職員からの依頼だった。きょうが4回コースの最終日でクルマに乗ると40分で到着する。秘書の妻を連れて行くが、美味しい食事ができることを餌に釣っていた。1回目は夕食に歴史ある鰻屋に、2回目は有名蕎麦屋に行く予定が定休日でうどん屋のランチ、3回目は中華料理店のボリュームある定食にした。この町は刃物が有名で、江戸時代から鍛冶屋職人が疲れを癒やすために鰻のタレも濃い味になっている。4回目はもっと美味しい鰻屋があると聞き店に着いたがテイクアウトだけだと知ってガッカリする。それでも1回目の鰻屋に11時過ぎに入ったが祭日でかなり混んで待たされた。午後1時から会場に入りアート講座の準備をした。お題は「バレンタインカードをつくる!」3日後のプレゼントするチョコレートの上に乗せるメッセージカードにもなり贈った相手にも喜んでもらえるとテーマに選んだ。女性4名と男性1名の受講者だったが、毎回の作品には目を見張るものだった。感謝の意を込めて、最後にプレゼントを用意していた。きのう近くにある高島屋の10階のイベントフロアにエレベーターで登った。平日の午前中ではあったが、チョコレートを買う女性たちがそこそこショーケースを覗いていた。カップルもいたが、男性ひとりはマサだけで少し恥ずかしかった。4つのチョコが可愛い正方形の8種類のカラフルな箱に入った商品が目に付いた。女性の店員が不思議そうに近づくので「8種類は同じチョコですか?」と聞くと、よくわからない様子で「これとこれは同じです」と何とか答えた。「じゃあ左から5つをお願いします。別々に包装してください」とできるだけ手短かに済ませた。5人の受講者に秘書の妻からチョコを手渡ししてもらった。グルメと受講者に会う楽しみが今日で最後と思うと、少しばかり切なくなるマサだった。